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平成25年・2013|問9|行政法

行政の自己拘束に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 事業者に対する行政財産の目的外使用許可が所定の使用期間の途中で撤回された場合に、撤回を行った行政主体に損失補償の責任が生じるのは、許可に際して損失補償をする旨の取り決めを行ったときに限られる。
  2. 行政庁がその裁量に任された事項について、裁量権行使の準則(裁量基準)を定めることがあっても、このような準則は、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものであるから、処分が当該準則に違背して行われたとしても、違背したという理由だけでは違法とはならない。
  3. 行政主体が一方的かつ統一的な取扱いの下に国民の重要な権利の行使を違法に妨げた結果、行政主体に対する債権を消滅時効にかからせた場合、行政主体の側が消滅時効の主張をすることは許されない。
  4. 行政主体が公務員の採用内定の取消しを行った場合、内定通知の相手方がその通知を信頼し、その職員として採用されることを期待して他の就職の機会を放棄するなどの準備を行っていたときは、当該行政主体はその者に対して損害賠償の責任を負うことがある。
  5. 異議申立てに対する決定等の一定の争訟手続を経て確定した行政庁の法的な決定については、特別の規定がない限り、関係当事者がこれを争うことができなくなることはもとより、行政庁自身もこれを変更することができない。

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【答え】:1

【解説】

1.事業者に対する行政財産の目的外使用許可が所定の使用期間の途中で撤回された場合に、撤回を行った行政主体に損失補償の責任が生じるのは、許可に際して損失補償をする旨の取り決めを行ったときに限られる。
1・・・誤り
判例によると、
「使用期間の途中で撤回された場合、損失補償を請求できません。ただし、例外として、
  1. 使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じた場合や
  2. 使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合

に限って、損失補償を請求できる。」

としています。

つまり、許可に際して損失補償をする旨の取り決めを行ったときに限られるのではなく
上記1.2の場合に損失補償はできるので誤りです。

2.行政庁がその裁量に任された事項について、裁量権行使の準則(裁量基準)を定めることがあっても、このような準則は、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものであるから、処分が当該準則に違背して行われたとしても、違背したという理由だけでは違法とはならない。
2・・正しい
判例によると
「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのである。そのため、処分が右準則に違背して(準則を無視して)行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」
と判示しています。
よって、本肢は正しいです。
3.行政主体が一方的かつ統一的な取扱いの下に国民の重要な権利の行使を違法に妨げた結果、行政主体に対する債権を消滅時効にかからせた場合、行政主体の側が消滅時効の主張をすることは許されない。
3・・・正しい
原爆の被害者に対する援護に関する法律に基づいて、健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が、外国へ出国したことに伴って支給を打ち切られたため、未支給の健康管理手当の支払いを求める訴訟で、判例では、
「行政庁が消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れようとすることは、受給権者(原爆被害者)によるその権利の不行使を理由として支払義務を免れようとするに等しいものといわざるを得ない。このような行為は、特段の事情のない限り、信義則に反し許されないものと解するのが相当である。
本件において特段の事情を認めることはできないから、行政庁は消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れることはできない
と判示しています。
よって、本肢は正しいです。
4.行政主体が公務員の採用内定の取消しを行った場合、内定通知の相手方がその通知を信頼し、その職員として採用されることを期待して他の就職の機会を放棄するなどの準備を行っていたときは、当該行政主体はその者に対して損害賠償の責任を負うことがある。
4・・・正しい
「東京都が正当な理由がなく採用内定を取り消しても、これによって、右内定通知を信頼し、東京都職員として採用されることを期待して他の就職の機会を放棄するなど、東京都に就職するための準備を行った者に対し損害賠償の責任を負うことがあるのは格別、右採用内定の取消し自体は、採用内定を受けた者の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼすものではないから、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するものということができず、右採用内定者においてその取消しを訴求することはできないというべきである。」
と判示しています。
したがって、「内定通知を信頼し、東京都職員として採用されることを期待して他の就職の機会を放棄するなど、東京都に就職するための準備を行った者に対しては、例外的に損害賠償の責任を負うことがある」ので、
本肢は正しいです。
5.異議申立てに対する決定等の一定の争訟手続を経て確定した行政庁の法的な決定については、特別の規定がない限り、関係当事者がこれを争うことができなくなることはもとより、行政庁自身もこれを変更することができない。
5・・・正しい
異議申立てに対する決定」についても、拘束力不可変更力があるため、関係当事者がこれを争うことができなくなるし、行政庁自身もこれを変更することができません。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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