令和6年度の行政書士試験の合格を目指す。理解学習が実践できる個別指導はこちら

国家賠償法2条(営造物の設置・管理の瑕疵に基づく賠償責任)

国家賠償法1条では、「公務員による違法な公権力の行使」という行為に着目しました。一方、国家賠償法2条では、「営造物の設置管理の瑕疵」という物の状態に着目します。

国家賠償法
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

行政書士の試験では、まず、「公の営造物」とは何か?を頭に入れる必要があります。その後、瑕疵に関する具体的な判例を覚えれば得点できます。

公の営造物とは?

「公の営造物」とは、公の目的に供されている有体物を言います。
「有体物」とは「物や設備」と考えていただいて大丈夫です。

そして、「公の営造物」と「公物」は同義(同じもの)で、大きく分けて「自然公物」と「人工公物」があります。

自然公物 河川、湖、沼、海、砂浜等
人工公物 道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃等

行政書士試験における注意点

公の営造物かどうかの判断基準は「公の用に供されているか(国民みんなが使うものか)」です。

つまり、所有権が誰かは問題ありません。

例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公の用に供されているのであれば、公の営造物です。このように、私人が所有する公の営造物を「私有公物」と言います。

一方、公の用に供されていない国公有地などは、公の営造物に含みません。
(=行政活動に用いられていない「普通財産」は、公の営造物に含まれない)

そして、判例(最判昭59.11.29)では、「公の営造物の設置又は管理は、必ずしも国又は公共団体が法律上の権限に基づいて行うことを要せず事実上これを管理することになったときは管理責任を負う。」としています。例えば、上記私道もこれに当たる場合があります。私道のため、法律上は、国や地方公共団体は、管理義務がありません。しかし、事実上、私道を管理する場合、国や地方公共団体が管理責任を負います。

設置又は管理の瑕疵とは?

公の営造物の「設置又は管理の瑕疵」とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることを言います。これは、客観的な瑕疵が存在すれば足り、損害の発生に関して設置者や管理者の過失の有無は関係ありません(無過失責任)。つまり、設置者や管理者に過失(落ち度)がなかったとしても、公の営造物の設置に瑕疵があったり、管理に瑕疵があれば、国等が賠償責任を負うことになります。

ただし、地震や大洪水といった自然災害のような不可抗力から生じた損害について、国賠法の対象にはなりません

この点は具体例として判例を勉強していくとよいでしょう。

瑕疵に関する判例

  • 工事標識板が道路上に倒れたまま放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であったとしても、時間的に道路を安全な状態に復旧するのが不可能な場合、管理に瑕疵があったと認めることはできない。(最判昭50.6.26)
  • 道路の瑕疵の判断について、国や公共団体が予算不足だからといって、免責にはならない(最判昭50.7.25)
  • 故障車が国道上に長時間にわたって放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であったにも関わらず、道路の安全性を保持するために必要な措置を全く講じなかった場合道路の管理に瑕疵があると認められる。(最判昭50.7.25)
  • 営造物自体に危険性がなくても、一定の限度を超える営造物の利用によって、利用者や第三者が損害を受ける危険性がある場合には、その営造物には設置又は管理の瑕疵があると認められる。(最判昭56.12.16)
    →利用者以外の第三者に対する損害も対象となりえる
  • 瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである。(最判昭61.3.25:「点字ブロック」と「設置管理の瑕疵」
    →これは、点字ブロックを駅のホームに設置していなかったことで、視力障害者がホームから転落した事故において、点字ブロックがなかったことが営造物の瑕疵に当たるかの判断基準の一つとして、この点字ブロックの普及の程度も考慮に入れるとしています。
  • 普通河川の管理について、普通地方公共団体の条例で、河川法の適用河川や準用河川(普通河川よりも大きい河川で国等が管理する河川)より厳しい管理を定めることは、河川法に違反するので、許されない。(最判昭53.12.21)
  • 未改修河川は、単に物的安全性の有無によってのみ管理の瑕疵が判断されるのではなく、原則として過渡的安全性(一時的な対策)で足りる。(最判昭59.1.26:未改修河川の安全性(大東水害訴訟))
  • 改修済み河川改修がなされた段階で想定されていた洪水に対応できる安全性を備えていたかどうかを基準とする。(最判平2.12.13:改修済河川の安全性(多摩川水害訴訟)
  • 国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、右の安全性を欠くか否かの判断は、当該営造物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである。本来の用法に従えば安全である営造物について、これを設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用した場合、国などは国家賠償法2条の責任を負わない最判平5.3.30:テニスコート審判台転倒事件

国賠法2条の求償

「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった」と認められる場合、国賠法2条の責任が成立し、被害者は、営造物の設置管理する国や公共団体に対して損害賠償を請求できます。そして、国や公共団体が賠償した場合、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償することができます。

営造物の設置者・管理者と費用の負担者が異なる場合(国賠法3条)

例えば、河川とダムについてA県が河川管理者として管理していて
その費用の2分の1は国が負担しているとします。
そして、「A県職員であるB」の誤ったダムの放流操作によって、周辺住民に損害を与えてしまった場合、A県だけでなく、国(費用負担者)も損害賠償責任を負います

そして、賠償した者は、責任になる者に対して求償することができます。例えば、上記事例で、国が損賠賠償した場合、国は、A県に求償できます。

国家賠償法
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

<<国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任) | 国家賠償法4条(国家賠償法と民法の関係)>>

【勉強の仕方等、お気軽にご相談ください!】
  • メールアドレス
  • お名前(姓・名)
  • 姓と名はスペースで区切ってください
  • 郵便番号
  • 例:123-4567
  • 住所(都道府県)
  • 住所(市町村以下)
  • ご相談はこちら

  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。