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内閣の権能

内閣は、一般行政事務の他、下記の15の事務を行います。

  1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。(73条
  2. 外交関係を処理すること。
  3. 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  4. 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
  5. 予算を作成して国会に提出すること。
  6. この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  7. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
  8. 天皇の告示行為に対する助言と承認(3条7条
  9. 国会の召集を決定すること。(7条2号
  10. 参議院の緊急集会を求めること。(54条2項
  11. 衆議院の解散をすること(7条3号)
  12. 最高裁判所の長たる裁判官を指名すること、およびそれ以外の裁判官を任命すること(6条2項79条1項80条
  13. 予備費を支出すること(87条
  14. 決算を国会に提出すること(90条1項
  15. 国会および国民に財政状況を報告すること(91条

法律を誠実に執行し、国務を総理する

国会で法律を作り、内閣がそれを執行するという流れです。

「国務を総理する」とは、行政事務を統轄し、行政各部を指揮監督するといったイメージです。

そして、「法律」については、あとで解説する「政令」同様、執行の責任を明確にするため、すべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

外交関係の処理

外交関係の処理は、内閣の権限です。

条約の締結

内閣は条約を締結することができます。そして、この条約は法律に優位すると解釈されています。つまり、この条約と法律が矛盾する場合、条約が優先します。そのため、法律制定機関である国会の事前承認もしくは事後承認が必要となります。

法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること

ここでいう「法律」とは、「国家公務員法」を指します。

また、「官吏(かんり)」とは「国家公務員」と考えて大丈夫です。

「掌理(しょうり)」とは、「とりまとめる」という意味です。

つまり、内閣は、国家公務員法の基準に従って、国家公務員に関する事務のとりまとめを行うということです。

予算を作成して国会に提出

予算の作成権限は内閣に属しますが、国会の議決を受けることが必要です。(60条

政令の制定

内閣は、政令を制定するのですが、この政令については、制定・執行の責任を明確にするため、すべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

政令とは?

政令とは、内閣の制定する命令です。

国会中心立法の原則から内閣が政令を制定するにあたっても国会が関与する必要があります。つまり、法律で定められた内容を執行するための細かい事柄を決める執行命令か、法律から委任を受けて細かい事柄を決める委任命令しか認められないと考えられています

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定(恩赦の決定)

上記をまとめて「恩赦(おんしゃ)」と言います。恩赦とは、内閣の権限で(行政権により)、刑罰の全部又は一部を消滅若しくは軽減させることを言います。

このように、恩赦するかどうかは、内閣が決定します。

大赦とは?

大赦(たいしゃ)は、一定の犯罪者全体について刑を消滅させることを言います。

特赦とは?

特赦(とくしゃ)は特定の者について刑を消滅させることを言います。

国会の召集決定

憲法第7条2号
内閣の決定に基づき、国会の召集を行う。

国会の召集決定は内閣が行い、天皇が召集します。

参議院の緊急集会を求める

憲法第54条
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

国会は衆議院と参議院で構成されていて、両議院は同時に活動します。そのため、衆議院が解散すると、参議院の会期も終了します。この間に、緊急事態が起こった場合に備えて、参議院のみ緊急集会を行うことができます。

内閣が緊急集会を決定します。

そして、緊急集会中は「国会」の会期中とはならないので、天皇の召集は不要です。

緊急集会の手続きについては、下記の通り、国会法で定められています。
内閣総理大臣が、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長に請求します(国会法第99条第1項)。請求を受けた議長はその旨を各議員に通知し、通知を受けた各議員は指定された期日に参議院に集会しなければなりません(国会法第99条第2項)

緊急集会の詳細はこちら>>

衆議院の解散

衆議院解散の決定を行うのは、内閣であり、解散をすることは天皇の国事行為です。

天皇は形式的儀式的に衆議院解散をさせるわけです。

衆議院解散の流れはこちら>>

最高裁判所長官の指名とそれ以外の裁判官の任命

憲法第6条
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

憲法第79条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

憲法第80条
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。

最高裁判所長官 内閣が指名天皇が任命
上記以外の裁判官 最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命

高等裁判所の長官も最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命します。

下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)の裁判官については、最高裁が指名するわけなので、裁判所の自主性を確保していると言えます。

予備費の支出

憲法第87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

予備費とは、予定外の支出及び予算を超過した支出へ対応するために準備しておく費用のことで、国の場合予備費は設けてもよいし、設けなくてもよいです(任意)。

そして、内閣は、この予備費を使う(支出)ことができるのですが、使った場合、あとで、国会の承諾を得る必要があります。もし、国会の事後承認が得られなかったとしてもその支出は有効であり、内閣の政治責任が問われることはあります。

地方自治法における予備費はこちら>>

決算を国会に提出

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

決算とは、一会計年度(1年間)の収入と支出の結果です。この国の決算は、初めに会計検査院に検査してもらい、その後、内閣が、決算書類と検査報告書を国会に提出します。

会計検査院とは?

会計検査院は、国や政府関係機関の決算、独立行政法人等の会計などを検査報告する行政機関です。

そして、会計検査院は、憲法90条で設置をすることが規定されており、内閣から独立してています。そのため、内閣の統轄の下にはありません。

また、国家行政組織法上の「国の行政機関」ではない点も注意しましょう!

財政状況の報告

憲法第73条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

憲法には、上記の通り、報告すべき財政状況の「具体的な内容」「方法」については規定されていません。

「報告する内容」については、例えば、毎会計年度の予算及び決算、国有財産や国の債務の状況、予算使用の状況などを報告します。

また、「報告の方法」については、財政法46条に規定されています。

財産法第46条
内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。

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